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デイリー通信|第16日目

Planetスタッフの和田です。
ついに最終週を迎えたシネドライブ。本日は快晴の日曜日ということもあり、非常に多くのお客さんが来て下さいました。

最初のプログラムはカントーク最終回、「カントーク vol.5 安川有果×レオス・カラックス」が行われました。聞き手を務めた『吉野葛』の葛生賢監督から「なぜレオス・カラックスを選択したのか?」という質問に対して「主演のドニー・ラヴァンが好きだから」との答えに、トークはレオス・カラックス論というよりも安川監督を中心とした本人自身の作家論のような様相を帯びながらその火蓋を切りました・・・

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               (上)安川有果監督

姉である詩人安川奈緒さんの影響で高校生の頃からカラックス作品に登場するドニ・ラヴァンの表情の表現力や佇まいに惹かれていったとその馴れ初めを話される安川監督に対して、葛生監督は安川監督の作品スタイルをフランス映画史において自作に自己を強く反映した主人公を登場させる作家達-フランソワ・トリュフォー監督におけるジャン・ピエール・レオーからレオス・カラックス監督におけるドニ・ラヴァン、そしてアルノー・デプレシャン監督におけるマチュー・アマルリックという系譜-と同様の「分身の系譜」に位置付けられる作家ではないかと述べ、その自己の反映方法を注視しながらトークを進められました。
 そのような流れで、監督は自身のスタイルを、主要な登場人物に監督と同世代の女性を多用し、物語内における人間関係を希薄にすることで即興的に女優の顔や仕草と風景の間で紡がれる変化をとらえてゆこうとしているとし、処女作『2007年2月2日』には無意識的に作品の女性主人公に自己が強く反映させていたことを踏まえ、次作『カノジョは大丈夫』では主人公の性別を男性性とすることで、無意識的だった自己を切り離し(相対化)つつ、その主人公を翻弄するある種、風来坊的な女性に自己を反映していくことで、観客に前作よりより強く反映された自己を魅せるようにしたと話されてゆきました。またそんな具体的な事例として葛生監督が指摘されたのが『幸恵』という作品のワンシーンで奥行きがあり画面奥に意味深なベッドが置かれている中で中年男性と女性が向かい合っても、アクション-リアクションといった通常の映画的な反応が何も起こらないことを指摘し、常に不思議なファンタジー性を持っているのが安川監督の特徴的なスタイルではないかと語られました。その後、ようやくトークは本題であるカラックス作品の話となり、安川監督が作品毎の好みについてふれてゆかれました。そこでベストとして挙げられた作品は『ボーイ・ミーツ・ガール』と『メルド』となり、『ボーイ・ミーツ・ガール』のような重要でないことが重なることでそれが必要とされるようになるような、単純に物語に奉仕するだけの映画ではなく、俳優や風景の瞬間を捉えた両作が好みだと話されました。またその一方で『ポーラX』のような作品は観念/象徴的過ぎて好みではないと語られていたことが印象的で、カラックスのフィルモグラフィーの好みでも固定的にスタイリッシュと呼ばれるものに対して嫌悪感を示している点が監督の作品制作の姿勢と通呈するものがあるのではないかとも思いました。(自分は直接その場に居合わせなかったので正確なことは言えませんが、前日の『ドライヴ100マイルvol.2』で安川さん自身の作品が何かに対するアンチテーゼを持たないと指摘されたらしいですが、本人としては何かしらの前述のようなアンチテーゼを共通点として持っているのではないではないかとも思います。)
 以上のように、カントーク最終回は監督自身の作家論のようなポイントを踏まえつつ、レオス・カラックスのフィルモグラフィーに対する好みの中でもそのような点がいかに反映されているかという話で幕を閉じました。

次の 『桃まつりセレクション』では、『SEX END THE CITY』の中山洋孝監督を司会に『マコの敵』の篠原悦子監督と『収穫』の粟津慶子監督のトークが行なわれました。

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     (左)篠原悦子監督(右)粟津慶子監督


 今回上映された二人の作品が多数の企画が行なわれてきたオムニバス映画『桃まつり』のなかでも「キス」を主題にしたこともあり、「キス」というオムニバスが企画された件から話が始まり、「キス」自体が「映画的」であるという流れで監督が各々の作品について語って下さいました。篠原監督は、作品制作のきっかけを知人のベリーダンスの舞台裏のドキュメントを撮影した際に同性同士における人間関係の危ういバランス目にしたことが本作の撮影動機となったとおっしゃり、自作における「キス」を男女間の好意から交わされるようなドラマティックなものではなく、女性同士の間で交わされ、二者の関係性を変えてしまうような唐突なものとして描いたと語られていました。粟津監督は、作品における「キス」が「自身の願望」と「観客へのサービス」の二種類に分けられると言い、前者をサスペンス的に、そして後者を逆に散漫なものとして息遣いや風など、触覚的側面を強調したと語られ、両監督共に「唐突さ」や「触覚性」という側面を強調することである種の「映画的」瞬間を切り取ろうとされていた点が非常に印象的でした。このような監督達が一つの主題をオムニバス作品という形で多面的に描くことで、その主題が「映画的」に浮かび上がってくるのが「桃まつり」シリーズが多くの人を惹きつける所以ではないかと、そんな考えを抱かされました。

その後、『桃まつりpresentsうそセレクション』では上映後、 『迷い家』の竹本直美監督、『カノジョは大丈夫』の安川有果監督、『離さないで』の福井早野香監督、そして『きみをよんでるよ』の朝倉加葉子監督の四人が来場され、満員御礼の劇場で舞台挨拶を行ないました。

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               (上)満員御礼の場内

話は、企画出発の経緯から始まり、個々人のオムニバス映画に参加することに対する制作意欲や、また各々がいかに「ウソ」という主題に向かい合ったか等が語られました。その後も観客から前日のオールナイトの内容を踏まえた質問が出されるなど、会場は熱気に満ち溢れていました。

最後に『ザ・バードメン』『あおときいろ』のプログラムでは上映後、篠原悦子監督が舞台に立たれ本作の撮影経緯や動機について語られました。『ザ・バードメン』の原案は監督が映画美学校在籍時にクラスを担当された瀬々敬久監督がエロティック、かつ恋愛の要素を含んだ脚本を書かないかと提案されたことがきっかけとなったと、その原点を振り返りつつ、一旦頓挫し、卒業後映画作品を撮りあぐねていた際、その企画がNSC(吉本総合芸能学院)の学生であった監督の友人から自校の学生を使って映画を製作して欲しいと依頼された事で本格的な撮影に取り掛かった語られました。そして話は『あおときいろ』へと移ります。本作はそのような経緯の後、『ザ・バードメン』や『マコの敵』のように人物間の感情の揺れを軸とした物語作りのアンチテーゼとして本年度冒頭に撮影され、とにかく動いているものを撮りたいという衝動に突き動かされて撮影されたと話されました。その後、トークは作品の主題的な側面に対して深く読み込んだ意見が飛び交うなどし、最後まで活発な雰囲気のまま、「桃むすめ」たちを中心とした本日のトークは終わりを迎えました。

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                (上)篠原悦子監督

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